菅創吉 − 「解脱」


三春のミニコレクション展
タブロー・版画編 1

2010年10月15日(金)→ 24日(日)
13:00 → 19:00 (月曜休)
目白・三春堂ギャラリー



ヘールト・ハウステン・ハウト
モニカ・ミューラー・ライブル
家住邦男
浅野弥衛


心惹かれて、のめり込んだのは工芸の世界でしたが、その合い間にいくつかの魅力的な絵にも遭遇し、 大変無理をして手に入れたものがいくつかあります。

そのなかで一番理性を失って手に入れたは、菅創吉氏の「解脱」という油絵でした。 お客様から教えていただいて展覧会中の小さな画廊を訪ね、それぞれの作品を見ていると、作品からとても精神の奥深さが伝わってきました。 どの作品も精神の高みに優しくひっぱってくれるように感じて、その中に嵌ってしまっていました。帰ることもできずにおりましたら、 そこの画廊の方に上手に営業され、長期分割払いを薦められました。 作品がすっかり気に入ってしまっているので、次第に心が動きだしておりました。 小品もとても素敵でしたので、その中から選ぼうとするうち、本当に一番気に入っているのは、大きな作品の「解脱」なのだからという、悪魔のような声が囁きかけてきました。 (その時の私の経済事情は、まったく絵を購入するなどとんでもないことでしたが。)
分割払いなら何とかなるのではという思いがどんどん大きくなって、すっかり現実から乖離してしまい、本当に気に入っているものにすべきだという思いに嵌っていきました。 恐ろしい忘我の世界に落ちてしまい、現実的には長いこと大変な思いをしましたが。

でもこの絵から、「解脱」という精神世界の高みを感じさせてもらいました。 画廊のご主人が、菅先生に会う機会をつくりますとおっしゃってくださっていたのですが、翌年、池田二十世紀美術館での展覧会中に77歳で亡くなられてしまいました。 突然の訃報を聞き、もうお会いすることが叶わないのだと思ったとき、自分からお目にかかる努力をしなかったことが、悔やまれました。 その後、未亡人にお目にかかる機会ができた時、「菅に逢わせたかった」とおっしゃっていただきなお更でした。

この作品は、私に現実を忘れて求めてしまう世界があることを静かに教えてくれた、衝撃的な出逢いの絵ですが、 この絵の深さを思うと、私のところよりもっとふさわしい場所を考えないといけないのでは思っています。

現代工芸を選ぶことが仕事ですが、別の美の世界から得るものが多く、それが仕事や私自身の栄養になってくれたと感じています。 経済的事情を越えても、手に入れることから得られる美意識や心の豊かさに助けてもらってきました。 でも現在の経済状況はそのような世界を淘汰しようとしています。 そんな渦中ですから、現実離れしたやりかたで奇跡的に30年余り続けてきた三春堂ギャラリーも継続することが、難しいと感じる日々です。 もし閉じるとしたら、私がしなければならないことは、今まで紹介してきた作家の作品を、どこかきちんと所蔵してくれるところを探す事と思い、しばらく前から動きだしたのですが、 受け入れ場所を見つけるのは大変そうです。できるか分からないのですが、それが責任と考えています。もし、良いアイデアがありましたらぜひお知らせください。

そして三春堂もしくは私の美の基準に影響を与えてくれたものたちを、少しづつ紹介をしようと思い、このミニ展をいたします。 すでに過去の三春堂危機を救うため、手放した駒井哲郎、難波田龍起、大竹伸朗、建畠覚三などの小作品は、美を楽しませてくれた上、三春堂を助けてくれました。 最近では山本容子さんの初期の銅板画やジョン・レノンのシルクスクリーンをお好きな方に手渡すことができ、嬉しかったです。 (こうして作家名を並べると、脈絡もなくばらばらなのですが)

菅創吉「解脱」をはじめ、心惹かれた絵を一部展示販売いたしますので、ぜひお出かけください。
安藤 三春


ジャッキー・ポンセレ
ル・コルビジェ
レベッカ・ソルタ


菅創吉 − 油絵「解脱」 初めて買った大きな油絵。衝撃的な出逢い。
浅野弥衛 - フロッタージュ 本当は乳白色の地色の油絵が欲しかったのですが諦めて、この作品に。でも、長く傍で見ていると奥深い世界が。
ヘールト・ハウステン・ハウト - 油絵   渋い色調の色分割が奥深い。
モニカ・ミューラー・ライブル - エッチング   偶然作品に出逢って、ぜひ展覧会をしたいと思った。
レベッカ・ソルタ - 木版画 京都芸大留学中に出逢う。軽やかでリズムのある木版で、後にテートギャラリーにも所蔵。所蔵作品と同じものがあります。
家住邦男 - タブロー 絵の具に砂や土を混ぜたテクスチャーが魅力的。
そのほか ル・コルビジェ、ジャッキー・ポンセレ、ミロ(小品、汚れあり)など



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